求人メディアの働きかけで果たして時給がアップするのか?九州・沖縄のナイトワーク求人の平均時給を調査(2023年1月)
日本最大級のアルバイト・パート求人サイト「バイトル」。テレビでは「時給を上げよう」というCMをよく目にします。タレントさんやアイドルグループを起用してキャンペーンが行われていますが、ネット上では「ムカつく」とか「お前が言うな」といった否定的な意見も散見されます。
バイトルの運営元dip(ディップ)創業者で社長の冨田英揮氏は、昨年5月の決算発表で「お客さまから相当反感を買っているとご心配いただいているが、実際には69%の企業から『好感が持てる』という評価をいただいた」と発表しており、その後時給がアップした案件は20万件に上ったそうです。実際にはどうなのでしょうか?過去に掲載されたバイトルのナイトワーク求人情報のデータを基に比較検証してみたいと思います。
九州・沖縄ナイトワーク求人の平均時給
九州・沖縄のナイトワーク求人の平均時給を2022年1月(青)と2023年1月(赤)で比較したグラフです。宮崎県と鹿児島県を除けば、青を赤が上回っており、一見すると時給はアップしているように見えます。
最も増加したのは熊本県(+174円)で金額、増加率ともにトップになっています。続いて大分県(+107円)、沖縄県(+106円)と続き、いずれも100円以上増加しています。
県別平均時給(1月)
2022年1月 | 2023年1月 | 増減額 | 増加率 | |
福岡県 | 2,050円 | 2,135円 | +86円 | 104.2% |
佐賀県 | 1,733円 | 1,744円 | +11円 | 100.6% |
長崎県 | 1,894円 | 1,931円 | +37円 | 102.0% |
熊本県 | 2,330円 | 2,504円 | +174円 | 107.5% |
大分県 | 2,017円 | 2,124円 | +107円 | 105.3% |
宮崎県 | 2,416円 | 2,333円 | -83円 | 96.6% |
鹿児島県 | 2,295円 | 2,198円 | -97円 | 95.8% |
沖縄県 | 1,902円 | 2,008円 | +106円 | 105.6% |
あくまでも平均値なので、極端に高い時給の求人案件に左右されるということは否めません。特に掲載件数の少ない県ではその影響が顕著に表れます。参考までに各県の平均掲載件数をご覧ください。
県別平均件数(1月)
2022年1月 | 2023年1月 | 増減額 | 増加率 | |
福岡県 | 355件 | 325件 | -30件 | 91.5% |
佐賀県 | 25件 | 23件 | -2件 | 92.0% |
長崎県 | 26件 | 29件 | +3件 | 111.5% |
熊本県 | 62件 | 58件 | -4件 | 93.5% |
大分県 | 29件 | 47件 | +18件 | 162.1% |
宮崎県 | 14件 | 13件 | +1件 | 92.9% |
鹿児島県 | 37件 | 38件 | +1件 | 102.7% |
沖縄県 | 75件 | 77件 | +2件 | 102.7% |
注目すべき点は福岡県の求人件数が大幅に減少していることです。一方で大分県の求人件数が増加していますが、一社で複数の求人を掲載しているケースが多く、掲載社数はそれほど多くありません。増加していることは確かですが、実際の掲載社数は30~40社で鹿児島県と同程度です。
宮崎県は掲載件数が10数件程度と最も少なく、その時点で掲載されている店舗の時給が平均値に大きく影響しているのではないかと思われます。それにしても平均時給はランク中2位と高いです。
鹿児島県では2022年2月に平均時給がピークの2,497円を迎えその後は緩やかに下降しています。昨年1月はそのピークの前月だったということが今回の比較で97円下落した原因だと思われます。それでもまだ福岡県の平均時給を上回っています。
時給は上がりつつある
今回の検証では概ね時給はアップしているように見えますが、バイトルとの因果関係までは確認できません。応募を集めるために競合他社との比較でやむを得ず時給を上げたというのが実情ではないでしょうか。バイトルが働きかけたことが原因だとは思えません。
もしもディップさんを演じているタレントさんが実際にお店を訪問して「時給を上げてください」とお願いされれば応じる人もいるかもしれません🤭そもそもバイトルの営業担当はdipの社員ではなくほとんどが代理店(下請け)です。残念ながらあのディップさんが営業に来ることは絶対にありません。
時給を上げるのは掲載してくれる企業や店舗(クライアント)です。キャンペーンを推進するのであれば掲載料金を割引するなど求人メディアとして協力するという方法もあると思います。求職者だけでなくクライアントに対してもメリットを与えることが求人市場の活性化につながり、社会貢献となるのではないでしょうか。
個人の感想ですが、dipが企画するキャンペーンには「ワクチンインセンティブプロジェクト」のようにワクチン接種に抵抗がある人に対して誤解を与えるような印象を受けることがあります。求人市場活性化の旗振り役は歓迎です。主役は雇用主と求職者であるということをお忘れなく。
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